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周辺の農村、ゆったりとした空間、そして、そこにいる人たちのつながり、支援があってはじめて都会というのは生きているんだな、ということを今回ほど感じたことはなかった」確かに田舎にはそういうものが当たり前のようにある。
上水道もあるが、水道が出なくなっても水に困ることはない。 井戸はあちこちにあるし、周辺には川の水や、あるいは田んぼの水がいくらでもある。
避難場所には事欠かず、辺りの田んぼや畑はすべて避難場所になる。 食料とて苦労することはない。
「豊かさとは何か」という問いかけを、人々はそこで考える。 総理府の調査によれば、物質的な豊かさは皆さん感じているが、自分にとって本当の豊かさを実感していると答える人はかなり少ない。
何が足りないのか。 健康に対する不安が一つある。
本当の健康が実感できない。 非常に忙しくて、時間的にゆとりが感じられない。

空間的なゆとりもない。 自然と触れ合う機会がない。
精神的なゆとりや安らぎとが得られない。 そうした、物質に低下した。
もう一つの対極の問題が農山村で起こっている。 かつては、といってもつい50年ほど前までの話だが、人口の半数近くは田舎に住んで、厳しい自然や大地と戦い、草をむしりながら食料生産を行ってきたのだが、いま山奥ではどんどん高齢化、過疎化している。
森林や谷地田を管理する人はもうほとんどいない。 昭和30年代から積極的に杉を植林してきたが、手入れをしないから、雨が降ればすぐにでも土砂崩壊が起こる。
コンクリートで河川を囲ってしまったから、雨が一気に下流の都市域を水浸しにしてしまう。 昔は山や森が水を吸収し、田んぼが水をせきとめ、そして緩やかにろ過されたおいしい澄んだ水を運んでくれた。
そこには豊かな生態系が展開され、人会の憩いの場を提供した。 だが、生産効率主義、高度経済成長の過程多くの日本の河川では3面コンクリート張りにしたために、ほとんど生物が棲めない状況になってしまった。
邪魔だからといって暗渠にしたり、高速道路を全国に張りめぐらせた。 水辺空間は切り崩され、都市部は大変なヒートアイランド現象をつくり出す。
生産性を極大化するためにはそれは非常に便利であったが、やがて困ったことがいろいろ現れてきた。 的な豊かさでは決して埋めることのできないものが現代人の心の悩みとなってきている。
自然環境、あるいは、広く生活環境そのものの豊かさを求める時代になっているといえるかもしれない。 こういう状況の中で、日本農業への期待はむしろ高まりつつある。

いまや、日本は高度に都市化社会となった。 農村人口の割合がぐんと減ってしまった。
農業を職業として取り組んでいる人は、労働力の比率でみるともう3%を切り、農業の粗生産額をGNPで割ると、何と1%台にまで落ち込んでいる。 それでも広大な面積で農業の生産は行われているが、自給率はカロリーベースで4割ほどと極端だ。
こんな不安な状況でこれから大丈夫なのかという問題が日本社会に突きつけられている。 どう使い、誰が管理するのか。
この豊かな瑞穂の国の大地をどのようにメンテナンスするか、そのなかでそれらは知らず知らずのうちに失われていった。 われわれの気持ちからもふるさとが遠のいた。
東京の世田谷区民が、本当の大自然に、あるいは農山村の営象に触れられる場所が欲しいというので、群馬県の最北端の川場村でふるさとを借りるという事業を行っている。 いまや、ふるさと賃貸契約によって、大金を払ってでもふるさとを借りるという時代となっている。
そんなアンバランスな状況が日本全体で進行している。 その結果としていま問われていることがいくつかある。

私たちの食べる食料は大丈夫か、それは地球環境問題や、われわれの身近な環境問題とどういう関係があるのか。 改めてこれを問わなければいけない時代を迎えるようになったのである。
食料危機は来るのか1996年11月に、FAO重連合霜農業機関)の本部があるローマで、「世界食料サミット」が開かれ、世界の主要閣僚が集まった。 日本人にはあまり関心がない食料問題だが、いま地球上で一つの大きな異変が始まっている。
世界の飢餓人口は、わかっているだけでも8億人余。 この数字は過去30年間ほとんど変わらず、増えつづけている。
第二次世界大戦後の半世紀は、農業の技術進歩が最も花を開いた時期であった。 「緑の革命」もあり、増産するためのありとあらゆる技術の花が開いた。
だが、これ以上の農地面積を増やすことはもはやできないことがわかってきた。 無理して増やしてもまともな農地にはならないし、逆に厳しい環境問題を引き起こす。
一方で、放っておいても砂漠化、土壌劣化、地下水の枯渇などの環境問題が生じている。 農業の生産性が低下したり、農地としてもはや使えない土地面積がどんどん増えている。
砂漠化する面積をみると、日本の農地面積を上回る600万〜700万ヘクタールの農地面積が毎年奪われている。 過去十数年、増やす分と減っていく分で釣り合って、世界の農地面積はほとんど増えていない。
農業用の水資源も、世界全体では減りつづけている。 単収(単位面積当たりの収穫量)を増やせばこの問題も解決できるのではないかと考えられるが、これもそう簡単ではない。
『ワールドウォッチ地球白書』で有名なR・B氏がもう十年近く前から警告を発している。 単収の壁である。
すなわち、1980年代後半から収量が非常に不安定になっており、豊作もあるけれども悪いときには大幅な不作になり、平均すれば世界全体の作物の単収はあまり増えていない。 単収も増えない。

世界の穀物の生産量のキャパシティーそのものがあまり増えていないというのが、ここ十年余の状況である。 ご存じのように人口はといえば、現在58.6億人。
2001年には65億、2025年には85億、そして2050年には100億人になるといわれる。 もしそこまで増えつづけることができれば、ということではあるがその人口増加と、経済発展によってもっと豊かな食生活をしたいという人左の欲望の増大。
これを世界の農業がかなえることができるのかどうかが、いま地球規模の課題として登場している。 だから、21世紀の大問題を解決すべく食料サミットが開かれたのである。
21世紀は「環境と食料の世紀だ」といわれる。 環境のほうは宣伝が行き届いており、いろいろなニュースが流れるので認識が深まった。
しかし残念ながら食料は、コンビニやスーパーに日をあふれ、しかも札束を切ればいくらでも手に入るという幻想、安心感があるために、日本人に危機感はない。 食料危機っていったいどこの国の問題なのか、という程度の認識かもしれない。
実際、日本の農業や農村は一つの危機に直面している。 農業は「きつい汚い危険」という3Kの典型とも言われることもある。

米不足の時アメリカ、オーストラリア、タイなどから約260万トンの米を輸入した。 だが、大半の輸入米はきわめて不評であった。
消費者の思いはますます国産米に走った。 総理府の別の調査では、8割以上の国民が、多少は高くても国産米のほうが欲しいといっている。
お金を出して買えないものがあるということを久方ぶりに経験した事件であった。 と同時に、日本の農業がどうもおかしくなっていることにも気がつきはじめたのである。

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